2019年8月18日
2〜5歳まで27人の子どもたちが毎日通う認可外保育施設「かぜあそび」がはじまって、四ヶ月。
こどもとこども、こどもと大人、こどもと環境ー。さまざまな “あいだ” ではじまった関係性が、この四ヶ月で少しずつ、いろんな方向に変化をしてきました。
広がり、深まり、近づくという関係性もあれば、離れてゆく関係性もある。
たとえば、春には見られなかった、「いれて」、「やだよ」、「やめて」の自己主張。開園してから、ほぼ毎日一緒に遊んでいたふたりが別々に遊ぶ、という姿も見られるようになってきました。
自然と同じようにとどまることなく、心と行動、そして、関係性を変化させてゆく、こどもたちの姿を見ていると、まだまだ新しい出会いが、その子自身の「中」でも「外」でもたくさん起きているし、これからも起きてゆくのだということに気付かされます。
「あと2回ねたら、おやすみでしょう?」
「ぼく、とうきょうの きょうりゅうてん にいくんだ」
そう、かぜあそびはこれからしばらくおやすみです。
そんな夏休み2日前の「森探検」では、こんな新しい出会いがありました。
「むしとりするひと、このゆびとまれー」
りくの呼びかけで集まった8人のこどもと2人の大人で、この日2回目の森探検へ出かけることになりました。
あんとかよこが、前を歩くりくを見ながら、こんな会話をはじめます。
「りくは“たいちょう”なんだよ」
「そうそう、なんでもしってるんだよね」
そんな二人のやりとりが聞こえたのか、りくが大きな声で言いました。
「おっほん、みなさんついてきなさい!」
しばらく歩いて、川へ到着したところで、何人かの足がとまりました。
「これじゃあ、ぬれちゃうよね?」と、不安そうにわたしに話しかけてきたあんも、その一人。
川を見てみると、大きな石が橋がわりになってくれそうだけど、たしかに今日の水量だと少し靴が濡れるかもしれない。
わたしはあんにこう返事をしました。「そうだね、濡れちゃうかもしれないね」
実際、長靴を履いてこなかった人たちは、靴を濡らしながら川を渡り、私自身も靴のなかがあっという間にびしょびしょです。
「ひかちゃん、ぬれちゃうよ」と、あん。
「うん。乾かせばいいかなと思って」と、わたし。
そのあと、しばらく周りの様子を見ていましたが、「そっか、かわかせばだいじょうぶだよね」と一言言ってから、一歩足を前に進めます。
濡れる足元。流れ続ける川の水。
そっと彼女を見てみると、さっきまで濡れるのを躊躇していたのが嘘のような表情を見せて、こう言いました。
「…つめたくて、きもちいいね!」
「おーい、こっちにもきてみなよ!」
りくの呼びかけにあんとかよこが行ってみると、泥沼に足をいれながら、「うわあー、ぬけなくなる〜」と足をいれたり、出したりしている、りくの姿が。
「やってみたら?」と誘うりくに対し、
「よごれちゃうからダメだよ」と、あん。
「わたしは、だいじょうぶ」と、かよこ。
「はいるはいる」と、わたし。
靴をぬぎ、足を入れてみると、なんとも言えない泥の感触と冷たさが癖になりそうです。
「りくくん、もっとあしふかくいれてみてよ」
「ひかちゃん、そこどうなってるの?」
入らないことを選択したあんとかよこですが、気になる気持ちはある様子。
そんな二人に、りくがぽつりと言います。「よごれたら、あらえばいいんだよ」
りくのその一言に、あんが動かされます。
「そうだよね、あらえばいっか。あらえばいいんだよね」と、まるで自分を鼓舞するかのように繰り返し言いながら、靴をぬぎ、ズボンをまくり、泥のなかに足を一歩踏みいれる。
その様子をみて、かよこの気持ちにも変化が。
「わたしも、やってみる」
「かよこちゃん、これはじめてのかんじ!」
「はじめてしったよ、つめたくてきもちいいね」
そう嬉しそうに言った、あんとかよこの表情を、わたしは一生忘れないと思います。
「そろそろ、おひるごはんにするぞ!」
川の水で足を洗ってから、結局使わなかった虫かごとあみを持ち、帰路についたみんなの足取りは、行きよりなんだか軽やかで、自信を持って見えたのは、新しい出会いを自分で経験したからかもしれません。